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ここでは過去にWIDEプロジェクトがメンバー向けに発信してきた主な活動報告をダイジェストでご紹介します。発信当時の内容に加え、新たな動きや状況の変化に応じて随時追記・更新していきます。

#03 AI3環境を活用しアジア域内の教育コラボレーションを推進するSOI Asia

アジア諸国、特に多くの島々から成る国は、物理的に高速インターネットケーブルを網羅することが難しい地域です。そこでWIDEプロジェクトでは、衛星を利用した広帯域インターネット基盤を活用し、アジア諸国の大学間の教育協力や遠隔教育の発展に向けた取り組みを行ってきました。それが2001年に立ち上げたSOI Asia(School of Internet Asia=ソイ・アジア)と呼ばれる国際教育コンソーシアムです。

SOI Asiaを支えている衛星インターネットは、1995年から活動している国際研究プロジェクト「アジアインターネット相互接続イニシアチブAI3(Asian Internet Interconnection Initiatives=エートリプルアイ)」が開発した実験的なインフラです。
ここでは、SOI Asiaと、それを実現させているAI3の主な活動を2020年9月に行われたプロジェクト定例会議の記録や2020年度の活動報告などを通して解説します。

1. AI3とSOI Asiaのこれまでの成果(1995-2020)

国際研究プロジェクトAI3(アジアインターネット相互接続イニシアチブ)は、1995年にアジアの研究機関間で設立され、WIDEプロジェクトとJSATコーポレーション(現在のスカパーJSATコーポレーション)の支援によって始動しました。AI3は、1996年10月にNAIST-ITB KUバンドリンクを確立してテストベッドネットワークの運用を開始し、2001年には慶應義塾大学SFCでCバンドベースのテストベッドを立ち上げました。

AI3はこのテストベッドで単方向リンク(UDL、Uni Directional Link)を開発・展開し、UDLR (Uni Directional Link Routing)技術の標準化に貢献しました。このUDLでIPv6とマルチキャストを運用し、アジアのより広いエリアの接続に貢献したことがAI3の大きな成果の一つです。

一方SOI Asiaは、このAI3が開発したインフラ技術を活用し、インターネット上で東南アジアの大学間の教育協力を実現することを目的に、WIDEプロジェクトが中心となって2001年に設立しました。この国際教育コンソーシアムは強力なコミュニティに成長し、大学のコースを共有するだけでなく、大学を拠点とする起業家支援基盤の確立や、災害時における相互支援などの活動に貢献しました。

AI3の共同研究活動とSOI AsiaのIT人材育成プログラムは、東南アジア地域の衛星インターネット基盤の開発に大きな役割を果たしてきました。両方のプロジェクトを通じて、参加国はインターネットの高度な技術と運用のノウハウを習得しました。パートナー組織と研究者がそれぞれの国でインターネットインフラ構築を主導したことで、現在のような環境が実現に至りました。プロジェクトメンバーの中にはインターネットの殿堂に名を連ねる3人の創設メンバーに加え、ジョン・ポステル賞の受賞者もいます。

2. 2020年 AI3/SOI Asiaミーティングの概要

AI3とSOI Asiaは例年2回ミーティングを開催してきましたが、2020年はパンデミックの影響により1回限りのオンライン開催となりました。第51回ミーティングは、2020年9月27日(日)から9月29日(火)の3日間に渡り、16:00から19:00の間にzoomを利用して行われました。11カ国から約40名が参加し、アジアにおけるインターネットと大学教育の発展について討議しました。

●第1日(9月27日)

プログラム:
  1. 開会挨拶   大川恵子
  2. 最新技術動向 村井純
  3. パンデミック時の大学の教育に関するパネルセッション
  4. 研究発表

WIDEプロジェクトファウンダーの村井純は、主にAPIDT(Asia Pacific Internet Development Trust)、APNIC(Asia Pacific Network Information Centre)Foundation、ARENA-PAC(Arterial Research and Educational Network in the Asia Pacific)に触れながら、この地域の最新動向の概要を説明しました。

次のパネルセッションでは、パネリストのMd.SaifulIslam(BUET, バングラデシュ)、Tat-Chee Wan(USM, マレーシア)、Muhammad Niswar(Unhas, インドネシア)、Alwin Sambul(Unsrat, インドネシア)、及び片岡 広太郎(IIT-H, インド)の5人がパンデミックへの対応について各大学での体験談を語りました。また梅嶋 真樹(慶應義塾大学)はSOI Asiaでの経験に基づいた、日本における遠隔教育の開発計画を紹介しました。ここでは主にコース提供の課題と解決策について議論しました。

研究発表会では、Roel M. de la Cruz(DOST-ASTI, フィリピン)がリモートセンシングのデータサイエンスの進化に関する研究、またMohammad Muntasir Hassan(BUET, バングラデシュ)がコロナウイルス検出技術に関する研究についてそれぞれ発表しました。

●第2日(9月28日)

プログラム:
  1. オペレーター会議
  2. アカデミック運営会議

オペレーター会議では、AI3/SOI Asiaのパートナー大学・組織がパンデミックへの対応を含め、接続性、NREN(National Research and Education Network)、及び教育における状況を簡単に報告しました。パートナー国のNRENは主にTEIN(Trans-Eurasia Information Network)に接続されており、資金調達構造の点で国によって異なります。教育に関しては、ミャンマーと東ティモールでは授業を中断しましたが、他の人々はオンライン授業を継続していると報告されました。

アカデミック運営会議では、W3Cxと呼ばれるW3C MOOCプラットフォームが日本語コースへの参加を呼びかけると共に、今後SOI Asiaが行うプログラムとして、APNICアカデミーとAITAC(Advanced IT Architect Human Resource Development Council)の協力により実施される予定のアジア太平洋ネットワークエンジニアコースを紹介しました。また、FutureLearnの量子コンピューティングコース、EBA(Evidence Based Approach)プロジェクトが開催する、EBAフィールドワークプログラムも紹介されました。

●第3日目(9月29日)

ディレクター会議:
次の議論が行われました。
  1. NRENの現状とその強化策
  2. SKY Perfect JSATによる将来の衛星技術とRENへの活用法
  3. 今後5年間のAI3計画(戦略・研究提案・研究会議を含む)
  4. 今後5年間のSOIAsia計画(APNIC、Interopとのコラボレーション、新たな教育共有モデルや教員育成コラボレーションモデルを含む)

閉会後、ソーシャルチャット(Spaital Chat)を利用したオンラインソーシャルイベントが開催され、参加者はプラットフォームでチャットしながら、学生による文化交流セッションで「おにぎりの作り方」が紹介され、参加者は互いにそれぞれ好きな食材を入れたおにぎりを作り、互いに紹介して楽しみました。

3. SOI Asiaコース

SOI Asiaプロジェクトの提携大学を対象に、2020年11月7日から12月26日にかけて8回にわたり「日本語会話入門(ISJ、Introduction to Spoken Japanese)コース」の講座を実施しました。オンラインで合計15時間行われたこのコースでは、ORP Gym(Online Oral Repetition Practice Support System)を使用することで、発話練習やフィードバックの機会を多くしました。SOI Asiaの4つの提携大学と慶應義塾大学から参加した計12名の学生がコースを修了し、高い満足度が報告されました。

一方、東京海洋大学(TUMSAT)の開催する「海洋科学技術の先端トピックス」講座は、現代海洋産業に活用されている海洋科学や工学、ロジスティクス、情報技術、海事教育に関する先端技術とツールの理解を目指しています。2002年のSOI Asiaコース開始以来、毎年実施され、SOI Asiaの提携大学及びTUMSATの学生、スタッフ、講師を対象に100を超える講義が開催されてきました。2020年度は14クラスすべてがZOOMとそのクラウドを介して行われました。海洋環境、海洋エネルギー、水素燃料電池、ロジスティクス、GPS / GNSSなど、SOI Asiaのパートナー大学に共通する重要なトピックが共有されました。2002年より20年にわたって行われたこの一連の講座は今年が最後となります。高度な講義の他、各国の学生によるプレゼンテーションも交えて行われるなど、TUMSAT関係者のご協力により、長期に渡り質の高い教育機会を提供することができたことをプロジェクトとして感謝申し上げます。

4. SOI Asia/AI3の今後

今年のミーティングを踏まえ、アジア地域でのインターネット開発やその教育について、SOI Asia/AI3パートナーと引き続き協力していきます。特に次の事項に注力します。

  • ● ARENA-PAC、SARENA-PAC(Satellite and Aero Research and Educational Network)、及びその他のREN開発に積極的に参加
  • ● アジア太平洋ネットワークエンジニアリングコース(APNIC及びAITACと協力)
  • ● EBAプロジェクトの共同コース開発(アジア地域でのフィールドワーク設計を含む)
  • ● ハイブリッドで柔軟な学習プラットフォームとマイクロクレデンシャル発行システムの開発
  • ● 非地上ネットワーク、動的ネットワーキング、データサイエンス、IoT、災害復旧のトピックにおける共同研究

パンデミックが続く中、次の2021年第52回ミーティングもオンライン開催となる可能性がありますが、状況が許せば直接会議を開催する考えです。

この2021年で、AI3は25周年、SOI Asiaは20周年の節目を迎えます。次の未来に向け、NTN(Non Terrestrial Network)の新たな課題について議論を開始し、GOREX(Guam Open Research and Education eXchange)の活動やARENA-PACといった、より広いネットワークコミュニティへの貢献の可能性を探っていきます。

5. 終わりに

2020年9月会議での議論に基づき、AI3は2021年3月末日を持ってCバンドを利用した衛星インターネットの運用を終了しました。引き続き、SARENA-PACとして非地上ネットワークに関する研究を発展させ、地上ネットワークであるARENA-PACと互いに補完してアジア太平洋地域にレジリエントなREN環境を構築するための研究を2021年度より開始しています。

SOI Asiaもまた、この会議での決議にそって、2021年度より、AITAC, APNICと協力して、APIE (Asia Pacific Internet Engineering)コースの開発を開始しました。

【 2020年3月 】

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