ここでは過去にWIDEプロジェクトがメンバー向けに発信してきた主な活動報告をダイジェストでご紹介します。発信当時の内容に加え、新たな動きや状況の変化に応じて随時追記・更新していきます。
APN(All Photonics Network)は、ネットワークから端末まで全てに光ベースの技術を導入することにより、現在の電子ベースの技術では達成困難な、低消費電力かつ高品質・大容量・低遅延の伝送を実現する技術です。1本の光ファイバを分波し様々な機能を割り当てることで、複雑化する情報インフラの様々な課題解決も期待できます。WIDEプロジェクトでは、様々な研究活動にこのAPNを活用できるようにするため、関連技術の導入を検討しています。
ネットワーク技術開発はエレクトロニクスからフォトニクスの時代へと移り変わりつつある。中でも近年インターネット関連技術の分野でよく話題に上るようになったのがAPNである。WIDEプロジェクトでは、従来のWIDEインターネット基盤の刷新による拠点間伝送の見直しに伴い、光伝送技術の実証基盤の構築可能性があること、また、来る国際研究教育ネットワーク基盤整備に伴う光伝送技術の導入が求められていることから、新たにAPN関連の研究を開始した。
光電融技術と光通信技術の開発によって、次世代の通信・コンピューティング融合インフラを構築する取り組みが進んでいる。NTTではこれをIOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)構想として提唱し、業界フォーラムを作って実現に向け取り組んでいる。
このIOWN構想の中でAPNについては、複数の光パスを有機的に取り扱い、大容量性、低遅延性、低電力消費性など、既存インフラと比べて高い優位性を持つネットワークの構成を図っており、最終的には光パスとの直接接続を見込んでいる。2023年6月に開催されたInterop Tokyo 2023において、NTTでは会場の幕張メッセほか3拠点を結ぶAPNのデモンストレーションを実施。一対の光ファイバでトータル1.01Tbpsのデータ転送レートを達成しAPNの優れた特性が示された。
光通信においては、一対の光ファイバに多様な行き先の通信を重畳するため、光波長を合分波して必要な区間に必要な波長だけを流すROADM(Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer)という機器が使われている。
現在国際間の通信に使われている海底ケーブル網は全世界で400本以上、距離にして約120万kmに及ぶ。途中でファイバの分岐や分波を行うことで多様な地点の接続が可能であり、その要となるのがROADMである。海中・陸上それぞれの環境に対応した手法がとられ、任意の区間を任意の波長によって接続を行っている。
WIDEプロジェクトでは現在、光通信に関して2つの検討がなされている。1つはTWOワーキンググループによるWIDE-BB上でのAPN実験、もう1つはWIDEが運用する国際広帯域バックボーンネットワークARENA-PACにおける海底光ケーブル通信の検討である。
TWO-WGでは、WIDE-BB内での光の多重化について検討を始めている。これは単に必要帯域の増加を目指すものではなく、例えば高精度時刻同期など遅延の影響を大きく受ける研究や、他の通信と共存できない量子インターネットの研究など、光通信を利用した様々な研究が始まっているためである。そこで、WIDE-BBのうち現在伝送装置によって接続されている区間をAPNに置き換え、実験を行っていく。
ARENA-PACについては、海底光ケーブルを活用した国際的な研究教育ネットワークの構築と運用を進める中で、新たな経路の接続が求められている。場合によっては海底光ケーブルの一対を購入して光通信を運用することも視野に入れている。また、ROADMを含めた海底光ケーブルシステムの運用を考慮する必要もある。
このようにWIDEプロジェクトでは、急激に注目を集めている光通信技術に着目し、今後もAPNをはじめ様々な方向から研究と運用を推進する活動を行っていく。
【 2024年10月 】