ここでは過去にWIDEプロジェクトがメンバー向けに発信してきた主な活動報告をダイジェストでご紹介します。発信当時の内容に加え、新たな動きや状況の変化に応じて随時追記・更新していきます。
デジタル社会への移行に向け、信頼性の構築は喫緊の課題です。フェイク動画をはじめとしたデータの信頼性への懸念、プライバシー侵害リスク、勝者総取りに伴う単一障害点のリスクなど、社会に多大な影響を及ぼす様々なペインポイントが生じています。
Trusted Webは、特定のサービスに過度に依存せずに、データ自体とデータのやり取りを検証できる領域を拡大し、Trustの向上を図ることを目的とした仕組みです。ここでは、Trusted Web推進協議会で2022年に議論された話題について紹介します。
Trusted Webは、2020年10月に内閣官房デジタル市場競争会議のもと設置された「Trusted Web推進協議会」で議論されているデータガバナンス志向のプロジェクトである。WIDEプロジェクト関係者もボードメンバの一部が深く関与している。
Trusted Web立ち上げのきっかけは、2020年6月に内閣官房デジタル市場競争会議が公開した「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」に対し、慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーンラボで行われた議論に端を発する。この頃ブロックチェーンラボでは今後の情報基盤のあり方について議論を進めており、2020年8月に「ニューノーマル時代における人間の社会活動を支える情報基盤の在り方とデジタルアイデンティティの位置づけ」というディスカッションペーパが公開された。
これらの議論を発展させる形で立ち上げられたのが「Trusted Web推進協議会」である。協議会では、2020年度内に重ねた議論を踏まえ、2021年3月にTrust Webの基本構想をホワイトペーパver.1.0として公開した。続く2021年度は、構想を具体化するために、プロトタイプの作成、ユースケースベースでの構想の検証、産業界のニーズの見える化を進めてきた。
2022年度はユースケース分析から得られたホワイトペーパver.1.0の課題を明らかにしつつ、根幹となるアーキテクチャデザイン、そして実現に向けてのガバナンスについての議論が進められた。
アーキテクチャについてはユースケース分析からのフィードバックにより、以下の6つの構成要素からなるアーキテクチャとして整理を行った。
ガバナンスについては、「新たにインフラとして付加されるTrustの仕組みの部分におけるガバナンスのあり方がどうあるべきか」という課題意識から、共有材(コモンズ)としてのガバナンスのあり方の追求の必要性が議論され、ガバナンスを構成する理念として、a.マルチステークホルダー指向、b.政府の役割の再定義、c.透明性、トレース、監査できること、d.エコシステムを持続的なものとするためのインセンティブ設計、以上4点で整理した。
2022年度は、ユースケース創出、コミュニティ形成、海外との連携を中心に活動を行っている。
ユースケース創出については、「Trusted Webの実現に向けたユースケース実証事業」として公募があり、以下13件のユースケース実証が行われている。
一方、コミュニティ形成についてはウェブサイトの整備やGitHubを用いたアウトリーチのほか、コンセプトを広めるための活動が行われている。また、海外との連携については、国際標準化視点での方向性の整理などが議論されている。これについては長期的に取り組みを継続していく予定である。
【 2024年1月 】