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2018.09.12
著作権法違反を理由とする接続遮断措置(サイトブロッキング)についての意見表明

 WIDEプロジェクトは著作権法違反を理由とする接続遮断措置(サイトブロッキング)について、以下を表明します。

・海賊版サイト対策としてのサイトブロッキングは、グローバルなインターネット、及び、すべての社会産業活動に影響を及ぼすものであり、その導入・実施に反対します。

・海賊版サイトに対する総合的な対策を進めるため、本件に関するすべての利害関係者とインターネット業界が産業の発展を目的とした、民間での議論を進める体制を整えるべきであり、その場の形成と参加に協力します。

・正規版の流通促進に寄与する技術の検討・開発・検証活動の推進に協力します。

 政府は、2018年4月13日の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で国内のインターネット接続事業者(以下、接続事業者)に対し、海賊版サイトへのサイトブロッキングの実施を促す緊急対策を表明しました。その後、これに呼応する形で一部の接続事業者が、サイトブロッキングの実施の方針を表明しています。
 インターネットは、各国の経済、行政・司法など、すべての社会産業活動を共通インフラとして支援している、グローバルな基盤です。サイトブロッキングの導入・実施はインターネットの破壊への第一歩であり、インターネットの破壊は、日本はもちろん、周辺の国々のすべての産業活動に影響を及ぼすことになります。
 インターネットでは通信の制御は通信当事者が行い、ネットワーク上のシステムは単純な中継・転送を行うという、エンドツーエンド原理が基本です。また、接続事業者におけるサイトブロッキングの実施は通信当事者の意思に反して通信の構成要素を知得・窃用するものであり、通信の秘密を侵害するおそれがあります。
 海賊版サイトの問題は、速やかに解決されるべき喫緊の問題です。しかし、今回の政府の緊急対策の表明と、それに伴うインターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)における検討の進行により、「ブロッキングを前提にしている」とみられてしまい、本来、連携・協力して解決策を見出すべき関係者間に、非建設的な対立関係を生み出してしまいました。
 インターネットではこれまで、マルチステークホルダーによるオープンな議論(*1)と合意により、全体方針が決定されてきました。WIDEプロジェクトは、グローバルな関係者間でのオープンな議論と合意による今後の持続的発展を実現するための有効な解決策がもたらされるよう希望し、かつ、最大限の努力を進めてまいります。

以上

(*1)
ISOC (Internet Society)
Internet Society Perspectives on Internet Content Blocking: An Overview:
https://www.internetsociety.org/resources/doc/2017/internet-content-blocking/

IETF (Internet Engineering Task Force)
RFC 7754 - Technical Considerations for Internet Service Blocking and Filtering
https://tools.ietf.org/html/rfc7754