WIDE

News&Events

2020

News
2020.03.25
IPv4アドレスブロック 43/8の未割り当て部分の移管に関して
WIDEプロジェクト
ファウンダー
村井 純
 

WIDEプロジェクトは長年、日本とアジアの研究ネットワークとネットワーク技術の開発に携わってきました。WIDEプロジェクトを開始した当初から、私たちはインターネットの創設にかかわり、私自身はジョン・ポステルやその他のインターネットの先駆者達と頻繁に連絡を取り合い、議論を重ねていました。

1980年代後半、私たちはそれまで主な対象とされていたアメリカやヨーロッパだけでなく、世界と、特にアジアにおけるインターネットの重要性を確信し、地域としての発展に取り組んできました。そのため、NIC機能委任モデルの実験として、ジョン・ポステルから日本のためにIPv4クラスBの割り当て(/16s)を割り当てられました。それ以来、私はアジア太平洋地域におけるインターネットの長期的な発展を推進するために、クラスBやクラスAの43/8を管理してきました。

1990年代初頭、私は理事長を努めていたJPNICから、APNICを設立しました。急速に成長していたアジア太平洋地域において、IPv4アドレス空間の継続的な割り当てを提供するためです。APNIC は 1993 年に運用を開始し、それ以来 IPv4 アドレス空間の管理は極めて成功裏に運営されています。

1992年以降、私はWIDEプロジェクトを率い、IPv6の開発と推進に専念しました。 この目的のために 43/8 アドレス空間の一部を、日本のネットワークの IPv6 への円滑な移行のために利用しました。このアドレス空間の一部である一つの43/11の部分は、APNIC によってそのプロジェクトの参加者に割り当てられ、残りは WIDE プロジェクトによって他の研究開発のために保持されていました。

IPv6の導入は予想より遅くなっていましたが、遂にインターネットの環境でIPv6が完全に運用され、世界のインターネットユーザーの約25%に使用されていることを非常に嬉しく思います。IPv6が成功し、将来の移行が進むにつれてインターネットが大幅に改善されることは明らかです。
IPv4 は引き続きインターネットにおける一定の役割を有していますが、IPv6 の利用増加に伴い、その役割は比較的短期のものとなるでしょう。IPv4 アドレス空間には現在、大きな価値がありますが、その価値は今後 10 年ほどで減少し消滅すると考えています。私はIPアドレスの商業化にはあまり積極的な立場ではありませんが、実際にIPv4アドレスの市場が存在し、APNICコミュニティはアドレスの市場移転のための適切な枠組みを開発し、中立の立場を維持しています。

43/8の将来を考えるに際して、私たちはそれが元の目的のためにどのように使われるかを再検討しました。慎重に検討した上で、アジア太平洋地域の健全なインターネットの開発を支援するために、このアドレスブロックを解放することを決定しました。43/8をIPv4アドレス市場で利用可能にすることにより、現在のインターネットサービスの健全な成長を実現するとともに、慎重かつ適切に利用すれば、将来のインターネット開発に大いに資する資本資産を生みだす機会にもなります。これは今だけの機会であり、今後、同じことはできない可能性が高いと考えています。

前述のとおり、APNIC は 27 年の間、極めて完成された体制を確立し、重要かつ効果的な役割を果たしてきました。 APNICは、地域インターネットレジストリとして大きく貢献し、アジア太平洋地域でのインターネットの開発に大きな影響を与えました。2016年にAPNIC財団が設立されたことにより、APNICが行ってきた善い活動はさらに拡がっていくでしょう。

APNICの役割とその成功を鑑み、私は2つの条件を付けてAPNICに43/8の未割り当て部分の移管を受けるように依頼しました。1つ目の条件は、このIPv4アドレスが市場で今だIPv4を必要とする人々に提供されるようにしてほしいこと、そしてもう1つはアジア太平洋の今後のインターネット開発に貢献することです。
APNICの最高幹部会がこの申し出を受け入れて、現在、この資産とIPv4アドレス市場での処理に責任を持つ公益信託 (アジア太平洋インターネット開発信託APIDT http://www.apidt.org/ ) を設立し、手続きを進めていただいていることに深く感謝しています。

私たちは、WIDEプロジェクトを通じて、信託の管理及び主にAPNIC財団を通じた私たちの地域におけるインターネット開発の支援に密接に関わり続けたいと考えています。

私はこの一歩を踏み出すことを非常に嬉しく思いますし、今後数年から数十年の結果を楽しみにしています。

このプロセスに関係している皆様に心より感謝を申し上げます。

以上

本件に関する連絡先: