Title: 2019年 mawi-wg活動報告書 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2020-01-20 1. MAWI WG について MAWI(Measurement and Analysis on the WIDE Internet)ワーキンググループ は、ネットワークデータの収集と解析を研究対象とした活動を行なっている。 MAWI WGではWIDEプロジェクトの特徴を活かした研究をするため、 「広域」「多地点」「長期的」の三つの項目に重点を置いたトラフィックの計 測・解析を行っている。 広域バックボーンでのデータ収集はバックボーンを持っているWIDEだからでき る事である。分散管理されるインターネットの状態を把握するためには、多地 点で観測したデータを照らし合わせることが欠かせない。また、長期的にデー タを収集し蓄積するために、ワーキンググループとしての継続的な活動が役に 立つ。 計測技術はほとんどの研究分野で必要となるため、MAWIワーキンググループは WIDE内の他のワーキンググループと連係をとりながら活動をしている。 また、グローバルなインターネットの挙動を把握するために、海外の組織とも 積極的に協調して研究活動をしている。 WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 また、これまで行ってきたデータ解析研究は、ビッグデータ解析との共通点が 多く、今後より広い分野への応用が期待されている。 2. MAWI WG 2019年度の活動概要 2.1 WIDEトランジットトラフィック概要 MAWIワーキンググループでは、トラフィックを多次元集約するagurimツール を開発し、2013年2月よりWIDEのトランジット回線のトラフィックを継続的に 記録している。 2015年5月には、ツールをオープンソースとして公開し、同時 に、IPアドレスを匿名化したWIDEのトランジット回線のトラフィックデータを Webインターフェイスでブラウズ可能にした。 これによって、ネットワーク運 用者や研究者が、バックボーンのトラフィック状況の詳細をブラウズできるよ うになり、トラフィック情報の共有や研究の促進に繋がることを期待している。 2019年全体を通して、平均のトラフィック量は450Mbps、パケット量は92kpps 程度であった。 個別の集約フローを見ると、集約されたネットワークに加えて、いくつかのホ ストが識別されている。 (wide-memo-mawi-agurim2019-00.pdf 参照) 2.2 ブロードバンドトラフィックの収集と解析 トラフィック量を把握することは、今後を予想する上で、また技術やインフラ への投資を考える上で欠かせない。 なかでも、トラフィックの増加率は長期 的な計画を立てる際に重要である。 日本国内のインターネットのトラフィック量の集計は、WIDEのメンバーが中心 になって、国内ISP9社ならびに総務省の協力を得て、2004年から継続的に行わ れている活動である。 今回の報告から協力ISPが4社増え、計9社のデータを基に国内インターネット トラフィックの動向を 報告している。これによってブロードバンドのカバー 率が大幅に向上し、より精度の高い総量推計ができるようになっている。 この1年間のインターネットトラフィックの傾向には大きな変化は見られない。 ブロードバンドは、ダウンロード量は年率15%の増加で依然伸びているが、 昨年は25%増加しており、伸び率は3年連続で低下している。また、ISP間のト ラフィックについては、海外からの流入比率の減少が続いている。 利用者レベルで見ると、インターネット経由の動画視聴が着実に増えているの は間違いない。ここ数年はあまり新しいサービスが出てこなかった事もあって 大きな変化として見えていないが、2020年4月からはNHKが常時同時配信を始め る予定でもあり、ユーザの視聴行動への、そしてトラフィックへの影響が注目 される。 (wide-memo-mawi-traffic2019-00.pdf 参照) 2.3 その他の活動 MAWI-WGでは、上で報告した以外にも、トラフィック解析、DNS解析、BGP解析、 セキュリティ解析、機械学習を用いた異常検出などの研究活動を行っている。 (論文リスト参照) 3. まとめ インターネットの研究において、計測はますます重要視されてきていて、国際 協調の機会も増している。 そのような状況のなかで、WIDEの計測活動は、グローバルな視点を持った継続 的な計測活動として国際的にも認知されている。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。 4. 論文リスト [1] 新津雄大,小林諭,福田健介,江崎浩. "大規模 IPv6 アドレスの収集・分析". 電子情報通信学会論文誌. 2020. [2] G.Hu, K.Fukuda. "Toward Detecting IoT Device Traffic in Transit Networks". ICAIIC2020, February 2020. [3] S.Kobayashi, K.Otomo, K.Fukuda. "Causal analysis of network logs with layered protocols and topology knowledge". IFIP/IEEE CNSM 2019, October 2019. [4] K.Otomo, S.Kobayashi, K.Fukuda, H.Esaki. "Latent Variable based Anomaly Detection in Network System Logs". IEICE Transactions on Information and Systems 102-D(9) 1644-1652, September 2019. [5] Jeremy Kepner, Kenjiro Cho, KC Claffy, Vijay Gadepally, Peter Michaleas, Lauren Milechin. "Hypersparse Neural Network Analysis of Large-Scale Internet Traffic". IEEE HPEC'19. Waltham, MA. September 2019. [6] J.Mazel, R.Garnier, K.Fukuda. "A comparison of web privacy protection techniques". Elsevier Computer Communications 144 162-174, August 2019. [7] S. Cho, R. Fontugne, K. Cho, A. Dainotti, P. Gill. "BGP hijacking classification". TMA 2019. Paris, France. June 2019. [8] A. Guillot, R. Fontugne, P. Winter, P. Merindol, A. King, A. Dainotti, C. Pelsser. "Chocolatine: Outage Detection for Internet Background Radiation". TMA 2019. Paris, France. June 2019. [9] S.Tarnoi, W.Kumwilaisak, V.Suppakipaisarn, K.Fukuda, and Y.Ji. "Adaptive probabilistic caching technique for caching networks with dynamic content popularity". Computer Communications 139 1-15, May 2019. [10] A. Milolidakis, R. Fontugne, and X. Dimitropoulos. "Detecting Network Disruptions At Colocation Facilities", INFOCOM 2019, Paris, France. April 2019.