Title: 2016年 mawi-wg活動報告書 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2017-01-11 1. MAWI WG について MAWI(Measurement and Analysis on the WIDE Internet)ワーキンググループ は、ネットワークデータの収集と解析を研究対象とした活動を行なっている。 MAWI WGではWIDEプロジェクトの特徴を活かした研究をするため、 「広域」「多地点」「長期的」の三つの項目に重点を置いたトラフィックの計 測・解析を行っている。 広域バックボーンでのデータ収集はバックボーンを持っているWIDEだからでき る事である。分散管理されるインターネットの状態を把握するためには、多地 点で観測したデータを照らし合わせることが欠かせない。また、長期的にデー タを収集し蓄積するために、ワーキンググループとしての継続的な活動が役に 立つ。 計測技術はほとんどの研究分野で必要となるため、MAWIワーキンググループは WIDE内の他のワーキンググループと連係をとりながら活動をしている。 また、グローバルなインターネットの挙動を把握するために、海外の組織とも 積極的に協調して研究活動をしている。 WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 また、これまで行ってきたデータ解析研究は、ビッグデータ解析との共通点が 多く、今後より広い分野への応用が期待されている。 2. MAWI WG 2016年度の活動概要 2.1 WIDEトランジットトラフィック概要 MAWIワーキンググループでは、トラフィックを多次元集約するagurimツール を開発し、2013年2月よりWIDEのトランジット回線のトラフィックを継続的に 記録している。 2015年5月には、ツールをオープンソースとして公開し、同時 に、IPアドレスを匿名化したWIDEのトランジット回線のトラフィックデータを Webインターフェイスでブラウズ可能にした。 これによって、ネットワーク運 用者や研究者が、バックボーンのトラフィック状況の詳細をブラウズできるよ うになり、トラフィック情報の共有や研究の促進に繋がることを期待している。 2016年全体を通して、1日平均のトラフィック量は約200-600Mbps、パケット量 は50-100kpps程度である。 個別の集約フローを見ると、集約されたネットワークに加えて、いくつかのホ ストが識別されている。 (wide-memo-mawi-agurim2016-00.pdf 参照) 2.2 ブロードバンドトラフィックの収集と解析 トラフィック量を把握することは、今後を予想する上で、また技術やインフラ への投資を考える上で欠かせない。 なかでも、トラフィックの増加率は長期 的な計画を立てる際に重要である。 日本国内のインターネットのトラフィック量の集計は、WIDEのメンバーが中心 になって、国内ISP6社ならびに総務省の協力を得て、2004年から継続的に行わ れている活動である。 ブロードバンドトラフィック量はここ数年大きく伸びて来ている。 ブロードバンド契約数はほとんど増えていないので、契約当たりのト ラフィックが増えていることになる。これは、ビデオコンテンツなどによって コンテンツのボリュームが増加していることに加え、スマートフォンなど利用 デバイスの多様化が進みクラウドベースの多様なサービスの利用が広がってい ることも要因であろう。さらに、2015年に大手コンテンツ事業者が相次いで定 額制の音楽配信サービスやビデオ配信サービスを始めた影響も考えられる。 ISP間のトラフィックについては、大手ISP間で交換されるトラフィックシェ アが減少する一方で、国内外のコンテンツ事業者やCDN事業者の存在感が増し ている。 (wide-memo-mawi-traffic2016-00.pdf 参照) 2.3 その他の活動 MAWI-WGでは、上で報告した以外にも、トラフィック解析[1,4,6,7]、DNS解析、 BGP解析[5]、セキュリティ解析[2,3]、機械学習を用いた異常検出などの研究 活動を行っている。 3. まとめ インターネットの研究において、計測はますます重要視されてきていて、国際 協調の機会も増している。 そのような状況のなかで、WIDEの計測活動は、グローバルな視点を持った継続 的な計測活動として国際的にも認知されている。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。 4. 論文リスト [1] Megumi Ninomiya, Kenjiro Cho. Inferring Live Streaming Delays in the Wild. TMA2016. Louvain La Neuve, Belgium, April 2016. [2] Johan Mazel, Romain Fontugne, Kensuke Fukuda. Identifying Coordination of Network Scans Using Probed Address Structure. TMA2016. 1-8. Apr 2016. [3] Romain Fontugne, Johan Mazel, Kensuke Fukuda. Characterizing Roles and Spatio-Temporal Relations of C&C Servers in Large-Scale Networks. WTMC2016. 12-23. Jun 2016. [4] T.Kurimoto, S.Urushidani, H.Yamada, K.Yamanaka, M.Nakamura, S.Abe, K.Fukuda, M.Koibuchi, Y.Ji, H.Takakura, S.Yamada. A Fully-Meshed Backbone Network for Data-Intensive Sciences and SDN Services. ICFUN2016. 909-911. Jul 2016. [5] Anant Shah, Romain Fontugne, Christos Papadopoulos. Towards Characterizing International Routing Detours. AINTEC 2016. November 2016. [6] Paul Tune, Matthew Roughan, Kenjiro Cho. A Comparison of Information Criteria for Traffic Model Selection. ICSPCS 2016, Gold Coast, Australia, December 2016. [7] J.T.Araujo, R.Landa, R.G.Clegg, G.Pavlou, K.Fukuda. On rate limitation mechanisms for TCP throughput: a longitudinal analysis. Computer Networks. 113(11) 159-175. Feb 2017.