Title: IDEON-WG 2014年活動報告 Author(s): 斉藤 賢爾 (ks91@sfc.wide.ad.jp), 土井 裕介 (doi@sfc.wide.ad.jp) Date: 2015-01-02 本ドキュメントは、IDEON-WG の2014年活動報告である。 1. はじめに IDEON は、Integrated Distributed Environment with Overlay Network の略で あり、オーバーレイネットワークによる自律分散環境の研究を行っている。 研究が社会で役立つのは、それによるイノベーションが実際に起きるときであ る。オーバーレイネットワークは、基本的に、ネットワークを応用するためには 必ず形成する必要があり、その研究開発が適用可能な領域は多岐に渡る。IDEON の仲間たちは、オーバーレイネットワークの基礎技術から個別のアプリケーショ ン層まで幅広い研究活動を行ってきた。 2. 2014年の活動 2014年は、昨年に引き続き、IDEON のメンバそれぞれが、これまでの研究成果を 礎として、新たな領域へと活動を広げていく黎明的な時期にあった。 2013年、デジタル通貨 (デジタル技術により創られたオルタナティヴ通貨) の 一種であるビットコイン (Bitcoin) が、いわゆるリアルマネーとの交換レート におけるその急激な価格上昇に伴い、にわかに社会の注目を浴びることになっ た。IDEON-WG はその設立 (2002年) の当初からデジタル通貨の研究を続けてお り、その10年以上の研究の蓄積から、ビットコインを巡る状況に対して、発言す べき内容を持っている。 2014年、ビットコインといわゆるリアルマネーとの交換を行う業者であるマウン トゴックス社が経営破綻した。その際、社は「トランザクション展性」を用いた 攻撃により不当に大量のコインが引き出されたと主張していた。だが、その後の 警視庁の捜査により、当該攻撃の影響は極めて限定的であることが示された。 このような事件の発生に際し、技術の詳細を一般に理解可能なかたちで提供し、 各利害関係者の主張が正しいかどうかの判断に寄与することは、我々の責務と考 える。そこで、次節ではビットコインにおけるトランザクションとその展性につ いて解説した。 3. ビットコインにおけるトランザクション、その展性と影響 wide-tr-ideon-bitcoin-transaction2014-00.pdf を参照。 4. おわりに 社会が大きく、しかし社会的な速度で (つまりゆっくりと) 相転移を迎えようと している今、IDEON の活動が貢献できる場面は多岐にわたると考えられる。ビッ トコインの普及により新たな局面を迎えた P2P と経済に関する課題はその一例 である。 今後も、統合分散環境の構築技術により社会に貢献できる道を様々な方面で探っ ていきたい。 -以上-