Title: CSAW WGの2014年度活動概要 Author(s): 奥村 貴史 (taka@wide.ad.jp), 阪本 裕介 (yanny@hongo.wide.ad.jp) Date: 2014-12-15 * はじめに CSAW(Collaboration Support Architecture for Wide-Community)は、WIDE プロジェクトの研究活動を支援する基盤として稼動しているアカデミック用 SNS(Social Networking Service)である。CSAW WGでは、名古屋大学河口研究 室を主体として開発されたACS(Academic Community System)をWIDEプロジェ クト用にカスタマイズし、2007年よりWIDEメンバー向けにCSAWサービスを提 供している。 近年、WIDE合宿やWIDE研究会への参加者が減少しており、新しい参加者も主 要研究室からの参加が主体で、多くは卒業や修了と共にWIDEのコミュニティ を去ることが珍しくない。こうした状況に対して、CSAW WGは、CSAWシステム を通じてWIDEコミュニティの活性化と研究活動の触媒となることを目的に活 動を行ってきた。 * CSAWを巡る状況 CSAWには、研究活動を支援するさまざまな機能が備わっている。WIDEメンバー は、CSAWにより、同じテーマに関心のある他のメンバーをCSAW上のフォーラム を通じて簡単に見つけることが出来る。また、WGやBoFのチェアは、手間を掛 けずに様々な規模の研究グループを運営することが可能となる。また、WIDEの 新人メンバーに対して、気軽で簡便なコミュニケーション手段を提供する目的 にも供することが出来る。これらは、機能に乏しいWIDEプロジェクトのMember Webを代替していくものとして、活発な利用が期待されていた。 しかし、CSAWは、設立直後に一定数の利用がみられたものの、その後は合宿や 研究会時の少数の利用に留まり、その後長らく、活発な利用は極一部のユーザー に留まっていた。利用者が少なければ、そもそもの目的であるWIDEコミュニティ の活性化を果たすことも出来ない。そこで、限られた人的資源のなかで、如何 にしてWGの主旨であるWIDEの活性化に貢献しうるか、WG合宿(2013年4月13日~ 4月14日)やミーティング(同8月31日)、WIDE合宿ワークショップ(2013年9月)を 開催するなどして、議論を重ねて来た。 こうした議論の結果、そもそも合宿や研究会への参加者自体が減るなか、活動 の主体である社会人が出来る貢献にも限界があることが明らかとなった。また、 活動予算の確保も模索したが、エンジニアを雇用できるような予算を確保する ことは困難であった。そこで、現行CSAWシステムについては省みず、まずはPC 活動の支援を通じてWIDEのコミュニティのために可能な範囲での貢献を果たす ものとし、以下の活動方針を定めた。 i) CSAWの当面の目的を、WIDE合宿、WIDE研究会の支援と定め、PCに よる代替わりモデルを生かしてシステムを運用していく形を目指す ii) 各種機能の実装方針やスケジュールは直ぐには定めず、合宿反省 会等の機会を生かしてシステムへの要望をさらに明確化していく iii) 必要な実装について、現在のCSAW関係者が行うことは確約でき ないが、反省会やPC会議に可能な範囲で参加し、要求をまとめる 役を勤める iv) 実装は柔軟に行うものとし、一度構築した後も、ツールありきの 運営でなく、いつでも捨てる柔軟性を持って進める。 * 今年度の活動 以上の方針に基づき、CSAW WGでは、現行CSAWシステムには執着せず、まずは PC活動の支援を目指し、研究会・合宿PCにCSAWリエゾン担当を参加させ課題 の整理や可能な支援を行ってきた。また、Twitterとの連携機能の運用や合宿 Web担当との連携を図った。 とりわけ、2014年の秋合宿においては、Human Bingo企画を担当し、WIDE参加 者のコミュニケーション促進に向けた貢献を試みた。Human Bingoとは、人物 のプロフィールに当たる文言が記載されているビンゴ用紙を用いて、そのプロ フィールに合致する人物を探し当てるゲームであり、参加者同士の交流が自然 に実現するパーティーゲームの一種である。この企画に際しては、参加者の数 だけ異なったビンゴ用紙を用意する必要があるため、Excelマクロを用いたビ ンゴ用紙と実施ノウハウの提供を行った。 CSAW WGとしては、WIDEの研究活動の活性化に向け、このような形で可能な 範囲での貢献を果たしつつ、人材や開発課題での良いマッチングを期待して いた。しかし、2015年合宿PC、2014年冬研究会への参加が困難となったうえ、 CSAWに対して完成度の高いサービスと現状以上の貢献が求められていること が明らかとなった。 CSAW WG自体は参加者の自由意志に基づく活動であり、WIDEプロジェクトの 活性化に向けたボランティアに当たる。したがって、WIDEメンバー同士が、 互いの立場を慮りながら協力しあう前提で活動を続けてきたが、限られた人 員が可能な時間の範囲で行う以上の要求に答えていくことは難しい。そこで、 関係者間で今後について相談をしたところ、今年度でWGを終了し、また適当 なタイミングでCSAWサーバを停止する方向で意見の一致をみることとなった。 * まとめ CSAW WGは、参加者が減少するWIDEのコミュニティ活性化を目指し活動を続け てきたが、コミュニティが求めるサービスを提供することが出来なかった。 そこで活動後半では、現在のWIDEプロジェクトの主要な活動の一つである研 究会・合宿の運用支援を目的の中心に据えた上で、継続的な活動が見込める PCの代替わりメカニズムを取り入れることで、ニーズと人員のマッチングを 図ることを目指した。 WIDEプロジェクトの活動を支える合宿、研究会に際しては、準備の任に当た るPC諸氏の負担も少なくない。したがって、研究発表やポスターの演題管理、 合宿や研究会のWeb管理等において、担当の負担を軽減していくツールに対す るニーズは確実に存在する。また、Member webも、1000名以上が所属する研 究プロジェクトの内部サイトであるにも関わらず、実際の利用は年に一度の 研究報告書の執筆管理程度であり、改善の余地がある。 こうした状況に対して、PC側はTracシステムやGoogle docs、遠隔会議シス テム等の併用による負担の軽減を図ってきた。しかしながら、PC業務には、 専用ツールにより効率化しうるルーチンワークもあり、また、外部ツールへ の依存は運営側の都合に大きく影響を受ける。したがって、サービスの長期 提供、ノウハウの継承や改善における自由度の観点から、Member webの更改 を含めてWIDE運営に必要な簡易ツールを自前運用するニーズは依然存在する と考えられる。 しかしながら、その実現に向けて、WGという活動主体は人材や予算面で制約 が大きい。実際、CSAW WGは、WIDEプロジェクトへの参加者自体が減るなか、 人員や予算を確保する困難さに直面した。これらの問題に対してはWGによる 努力にも限界があるため、今後は、WG活動としてではなく、予算を確保した 上で外注する方向性も合わせて検討する価値がある。そうした試みを通じ、 WIDE参加者が効率的に研究活動を遂行し、参加目的を達成することができ るよう、必要な支援をしていくことが望まれる。