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プレスリリース

2008年4月29日

デジタル技術の健全な社会応用を阻む「ネット有害情報規制法案」に反対します

WIDEプロジェクト

反対声明文

自由民主党において検討されてきた「青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」(以下、「法案」) が、今国会で提出されようとしています。

WIDEプロジェクトは、1988年以来、地球上のコンピュータやあらゆる機器を接続し、人や社会の役に立つ分散システムを構築すべく、そのために必要な課題と問題点を追求し、医療、経済、教育、法律など、社会の多様な分野に貢献できる、公共性の高い情報インフラストラクチャの構築を目指してきました。その見地から、我々は法案に断固反対します。

法案は、有害情報から青少年を保護するために、以下の措置を講ずることとしています:

  1. 内閣府委員会での有害基準の策定と主務大臣の行政命令
  2. ウェブサイト管理者に対する有害情報の削除義務
  3. 携帯電話会社に対する未成年フィルタリングの義務化

WIDEプロジェクトは、これらのそれぞれに対し、次のように問題点を指摘します。

1 政府が何が有害な情報であるかの基準を設け、行政命令権を持つことの問題

情報の意味は、情報の受け手との相互作用により決まります。政府が一意に情報の意味を決定し、一様にアクセス手段を制限するという法案は、情報空間における多様な可能性を排除することに繋がり、情報社会の健全な発展を阻みます。

2 「有害情報」の削除義務を設けることの問題

情報の共有や交換の場を管理する者に、政府基準に基づく「有害情報」を削除する義務があるとすれば、有害と言われる情報に関して、国民が例をあげて議論することさえままならない状況を生むでしょう。それは国民の主権を揺るがす事態であるとさえ言えます。

また、セキュリティ管理の観点からは、新たな攻撃手段を攻撃者に与えることにもなります。攻撃の対象となるサイトに、執拗に「有害情報」を書き込めば、管理者がその対応に追われたり、対応を怠った場合には罰則が適用されることにより、攻撃者が当該サイトの運営や管理者の生活の自由を奪うことが可能になるためです。

3 サービスプロバイダにフィルタリングが義務づけられることの問題

我々が経験から学んでいることですが、フィルタリングに対しては、ユーザによる柔軟な操作を可能にしなければなりません。

現在、広く活用されているフィルタリング技術に、迷惑メールをふるい分けるスパムフィルタがあります。

日本語や英語などの自然言語には多義性がありますが、現在のフィルタリング技術は、言語のこの性質に完全に対応できるほどには高度ではなく、日々、大量の有益な情報がスパムフィルタによりフィルタリングされ、必要としている相手に届かないという問題が発生しています。

法案が、携帯電話会社にフィルタリングサービスを義務づけることは、この種の問題の拡大を招く恐れがあります。

情報の取捨選択を自動化し、人間個人の生産性を向上させる上でフィルタリングは重要かつ有用な技術ですが、ユーザの手元でフィルタリングの有無を状況に応じて切り換えたり、フィルタリングされた情報に適宜アクセスすることを許さなければ、いざ問題が起こったときに適切に対応することができず、生産性はかえって低下するのです。

デジタル技術の健全な社会応用に向けて

インターネットは、デジタル技術の基盤性をフルに活用し、多くのコンピュータや種々の機器が接続できることに加え、様々な個人や団体が主体として参加できる、工学的にも社会的にも分散したシステムとして発展してきました。この分散システムにおける様々な問題には、分散的に取り組むのがよく、もし、中央が一様なやり方で事に当たるとすれば、デジタル技術や分散システムの利点自体が失われることに繋がりかねません。

青少年の身の回りで起こる問題は、その現場で解決していかなければ、青少年自身が成長することも望めません。

中央が情報を遮断することにより、青少年へのインプットを方向づけ、それにより健全な育成が行われると考えるのなら、それは、家庭の力を、教育の力を、そして産業の力を、軽視あるいは無視していると言えるでしょう。そのようなことが現実に行われれば、日本の家庭や教育、産業の力は失われていく一方でしょう。

問題は、問題が生じる現場で解決していく。

このことが徹底される以外に、21世紀の、目まぐるしく変化する地球環境の中で、日本国の国民が問題解決能力を育て、世界の中で競争力をもって、生き延びていくことはできません。

分散システムで起きている社会的な問題に対し、デジタル技術の基盤性を高度に応用し、分散的に解決する手段を講じ、それを実施していくことに関しては、WIDEプロジェクトは全面的に協力することを惜しみません。

WIDEプロジェクト一同

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