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プレスリリース

2006年6月16日

WIDEプロジェクトと米国Internet Systems Consortiumが、株式会社東芝と共同で標準DNSサーバ BIND9の高性能化を完了 - 次世代インターネットの基盤作りに貢献 -

WIDEプロジェクト
Internet Systems Consortium

 WIDEプロジェクト(代表 学校法人慶應義塾常任理事 兼 慶應義塾大学環境情報学部教授村井純)と米国Internet Systems Consortium(代表 Paul Vixie)は、株式会社東芝(代表執行役社長 西田厚聰)との共同研究によって、インターネットにおける標準ドメインネームシステム(DNS)サーバの次世代バージョンであるBIND9の性能を大幅に 引き上げる研究プロジェクトを完了しました。とくに、DNSサーバとしての基本的性能である応答速度については、マルチプロセッサマシンの能力を最大限に 引き出すことで、従来比で最大2.1倍の性能を実現しました。

  DNSサーバのデファクトスタンダードであるBIND9の従来の実装では、複数CPU環境における性能が不十分 で、とくに処理数が膨大で性能要求が厳しいルートサーバでのBIND9移行の妨げとなり、BIND9が提供する新しいDNS技術の普及を遅らせる一因とも なっていました。そこで、今回の研究では、マルチスレッドにおける性能上の主な障害を取り除く実装アーキテクチャを検討、実現しました。たとえば、従来の 実装では、サーバ上のメモリ領域を複数のサーバが頻繁に参照および更新する構造になっており、その衝突によって著しく性能が低下していました。これに対 し、本研究で改良した実装では、参照個所を可能な限りスレッド単位に分割することで、それぞれのスレッドが最大限に並列して実行できるように工夫しました (図1)。また、サーバのデータベース構造も抜本的に見直し、スレッド間の衝突が起こりにくくするような改良を施しました。この改良手法により、本研究で は、従来比で最大2.1倍の性能を実現し、複数CPUの利用によって旧バージョンよりも豊富な機能をより高い性能で実現することに成功しました(図2)。 さらに、本研究では、膨大なドメイン数を扱うために巨大なデータを利用するときでも、サーバを迅速に起動してサービスの持続性を向上させられるよう、ゾー ン情報(DNSサーバが読み込むデータ)の構造を最適化しました。この実装を用いて、約850万個のデータを持つサーバデータセットの設定を読み込ませた ところ、従来に比べて2倍以上の高速化が実現できたことを確認しました。


fig.1
図1:スレッドの並列実行


fig.2
図2:ルートDNSサーバ設定での応答性能評価。

"old, new"および"thread, nothread"は、それぞれ従来実装と改良実装、およびスレッド対応の有無を示す。BIND8(旧バージョン)およびBIND9(no thread)においては、スレッド数の増加は結果に影響しないため、すべてのスレッド数において同じ性能が出ているものとしている。BIND9 (new,thread,target)は、改良実装に対する本研究での目標値とした性能を記したもの

  DNSは、インターネットにおける「名前(www.toshiba.co.jpな ど)」と「アドレス(202.33.69.160など)」との対応を付けるための世界規模の自律分散データベースシステムです。DNSによるこの対応付け は、メールやウェブのような従来のインターネットアプリケーションはもとより、ネット家電やIP電話などの次世代の応用技術を含む、インターネット上のほ とんどすべてのアプリケーションが利用している重要な基盤技術です。

  DNSの名前は、図3に示すような階層 構造で実現されています。このような構造が、インターネット上の無数のサーバによって分散管理されているのがDNSの大きな特徴です。その中でも、とくに 頂点にある「ルート」を管理するサーバ(ルートサーバと呼びます)はDNSを正常に動作させるために非常に重要な役割を果たしており、世界中のクライアン トからの膨大な問い合わせを処理しています。

fig.3
図3:ドメイン名の階層構造

  インターネットの発展とともに、その基幹技術であるドメイン名システム(DNS)に要求される機能も高度化してお り、今日のDNSサーバには、次世代インターネット標準のIPv6に対応するためのデータベースの拡充やDNSサーバに対するサービス妨害攻撃のような直 接的な脅威などといった新しい要求に対応できるだけの性能も求められています。このDNSサーバとして、世界で最もよく使われているのが、米国のNPO団 体ISC(Internet Systems Consortium)が開発しているBIND(Berkeley Internet Name Domain)です。今回の共同研究開発は、当初WIDEプロジェクトとの連携によるDNSのIPv6対応強化を目指したISCの依頼を受けて2001年 から始まり、2004年以降は、東芝が総務省の戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)におけるプロジェクトとしての採択を受け、IPv6対応のみ ならず一般の性能面の向上も目標に入れて開発を加速しました。その成果は、すでにBIND9の次期バージョン(バージョン9.4.0a5)に採用されてお り、ISCによる従来の成果と同様、オープンソースの形で一般に公開されています。本成果をまとめた論文は、実践的なソフトウェア成果を対象とする学会と しては最高レベルのUSENIXカンファレンスにも採択され高い評価を得ております。また、来る6月19日に予定されている総務省戦略的情報通信研究開発 推進制度(SCOPE)成果発表会でも、本研究の成果を報告する予定です。

  今回の研究成果に対し、ISC代表のPaul Vixie氏は、「東芝の技術陣は、ISCチームと共に上級技術者・アーキテクトとしてBIND開発に従事してくれた。これはBINDソフトウェア開発に とって、非常に大きな貢献といえる」と述べ、東芝は、「国内だけでなくISCをはじめとする世界の研究開発グループとの連係もますます強めながら、次世代 インターネットのさらなる発展に寄与していく」と今後に向けての抱負を語っています。WIDEプロジェクト代表の村井純は、「日本の技術が次世代のイン ターネット構築に大きな貢献を明確にするのが長い間の夢でした。東芝とISCの関係が象徴的な成果を挙げていることはこの夢の現実化の大きな一歩です。」 と今回の成果を評価し、関係組織と共に今後も研究活動に邁進していく所存です。


用語解説

WIDEプロジェクト
URL: http://www.wide.ad.jp/
インターネット関連技術の実践的な研究開発を行う研究コンソーシアムで1988年に活動を開始し、133社11大学などと幅広い分野で共同研究を行っているほか、1997年よりルートDNSサーバの一つである「M.ROOT-SERVERS.NET」の運用も行い、インターネットの発展に寄与しています。

Internet Systems Consortium
URL: http://www.isc.org/
Internet Systems Consortium(ISC)は1993年にDNSやDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)といったインターネットのコアプロトコルの高品質な参照実装を普及するために創設されました。BINDと呼ばれるISCのDNS実装はBSD(Berkeley Software Distribution) システムの一部としてUCバークレイで開発されたものを創始とし、これを元にISCにより完全に書き換えられたものです。インターネット上の殆どのDNSサーバは、BINDもしくはBINDに由来するソフトウェアを実行しています。


【報道機関からのお問い合わせ先】

WIDE Project 広報担当
TEL:0466-49-3618 FAX:0466-49-3622
e-mail:press@wide.ad.jp
〒252-8520 神奈川県藤沢市遠藤5322
慶應義塾大学SFC研究所 ΔN109

Internet Systems Consortium
http://www.isc.org/
950 Charter Street, Redwood City, CA 94063, USA
Phone: +1 650 423 1300
FAX: +1 650 423 1355
Email: info@isc.org

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WIDE Project 広報担当
TEL:0466-49-3618 FAX:0466-49-3622
e-mail:press@wide.ad.jp
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