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代表挨拶

WIDE プロジェクト代表
江﨑 浩
 
WIDEプロジェクト代表 江﨑 浩
 

2015年10月の最終週から11月の第1週にかけての2週間に、第94階IETF会合(於 横浜)とW3C TPAC(於札幌)を連続して開催するとともに、ACM IMC2015やIEEE CSCNなどの国際会議も同時に開催することができました。この2つの会合を日本で連続した週での開催は、IETFとW3Cの戦略的協調関係・連携活動を起動させることを目指すものであり、成功裏に会合を終えることができました。さらに、会合中には、ISOC(本部)とISOC-JP、IGCJ(日本インターネットガバナンス会議)、WIDEプロジェクトの共催による「Collaborative Security and Collaborative Internet Governance」に関するExecutive Briefingも開催することができ、インターネットガバナンスと特にインターネット原理に基づいたセキュリティーに関する情報共有と方向性の確認を行うことができました。なお、IETF会合には、過去最大の52か国から合計で約1,400名の参加となりました。日本での開催は、2002年(横浜)、2009年(広島)に続いて3回目の開催であり、WIDEプロジェクトのメンバー組織を中心に多数のスポンサー組織によるご支援によるものであり、ご支援をいただきましたWIDEプロジェクトの参加組織の皆さまには、深く感謝の意を表させていただきます。

IoT(Internet of Things)において、すべてのモノ(Things)へのアクセスは、インターネットインフラを用いたWEBのインターフェースに向かっていますし、ますます高度化・高精細化するデジタルメディアもWEBのインターフェースを主眼において、多くの研究開発と技術の標準化が進められています。さらに、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京での開催に向けて、新IT戦略が策定されるとともに、2015年10月には「IoT推進コンソーシアム」がWIDEプロジェクト ファウンダーの村井純を会長として発足するなど、インターネットを前提にした社会インフラの高度化とスマート化が推進されなければなりません。2020年に向かって、WIDEプロジェクトとして、我々の研究開発の成果をもとに、グローバル社会への貢献が期待されています。インターネットが社会に広く普及し、商用のインターネットサービスの品質の向上に伴い、インターネットに関する研究開発の必要性・重要性が低く評価されている場合が見受けられますが、以下の理由から、ますますグローバルな教育研究を目的としたインターネットテストベッドの継続的なアップグレードと拡大を進めなければなりません。一つには、インターネットが一般化し産業・社会活動の基盤となったために、政府がインターネットのコントロールをナショナルセキュリティーという観点・理由から強化しようとしていることが挙げられます。あるいは、グローバルに連携可能な人材が自由に交流可能な環境を提供し続けなければならないこと、グリーバルシステムを自身で設計・実装・構築・運用する知見と経験が継続的なイノベーションにとって必須であることです。このような背景のもと、WIDEプロジェクトでは、華為技術社殿やシスコ社殿をはじめとした多くのWIDEメンバー組織の方々やグローバルなパートナー組織の方々のご支援によって、WIDEインターネットの基幹部分の100G化とその北米の研究教育テストベッドとの接続を実現することができました。WIDEインターネットを用いた、新しい段階の研究開発を起動させなければならないと考えています。

2000年頃のパソコンは、2010年頃にはスマートフォンになり、いよいよ最近ではUSBメモリくらいの大きさになりました。さらに、これらを動作させるために必要な基本ソフトウェアもオープンソフトウェア化が急激に進展した結果、誰でも自作で面白い小型・高性能機器を創作できるようになってきました。すべての小型・高機能デバイスが、最先端の無線通信技術でインターネットに接続され、さまざまで膨大な量のデータがインターネット上に展開されているデータセンター内のサーバに転送され、莫大な数のサーバを用いたビッグデータ解析が行われ、さまざまなサービスが創成されるとともに、実空間の管理と制御が行われスマートなインフラが実現されるというビジネスストーリです。思い出してみると、このようなビジョンは、我々WIDEプロジェクトは、1990年代後半に、IPv6に関する議論として行っており、インターネット自動車やスマートビルなど実践的な研究開発活動を展開してきました。当時の一番の懸念は、TCP/IPを実装したいろいろなシステムがインターネット産業以外の分野で導入・展開される場合に、これらが、インターネットに接続されない固有のサイロを形成し、固有のの相互接続されないネットワークを形成し運営されることでした。現在のIoTは、グローバルな接続性を提供可能なTCP/IPは利用するかもしれないけども、Walled Gardenとよく言われる「保護された空間」を意図的に形成して、ユーザを囲い込むVertical Lock-onのシステムが構築され、多数のFragmentされた空間を生成しようとしているのではないでしょうか。この「保護された空間」で用いられるアプリケーションレイヤでの識別子などは、グローバル性や他の「保護された空間」との相互接続性を考慮しないものとなってしまう場合が非常に多く見られます。W3C(World Wide Web Consortium)が進めるWoT(Web of Things)は、このような、FragmentされたWebの空間にならないよう努力をしていますし、さまざま組織がインターネットのFragment化への懸念を表明していますが、インターネットは、現在、地球上で唯一の共通のプラットフォームという重要な特性を維持できるかどうかの瀬戸際にあるように思えます。Fragmentを防止することこそがIoTの成功の必須条件のはずなのですが。

我々は、毎年夏に開催しているボードメンバーを中心にした合宿において、今回は『人工知能・深層学習とインターネット』をテーマとしました。ここでの議論でも、サイバー空間と実空間の融合と、グローバル規模でのスケーラブルなコンピューティング環境、さらに、これを実現する革新的なコンピューティングプラットフォームの必要性と重要性を再確認することができるとともに、人工知能や深層学習の分野とこれまでのインターネットの融合・統合に関する研究開発の必要性を認識・確認することができました。

我々は、このように、物理的に無限ではなく有限な実空間の上で、唯一の共有されるコモンズの空間(=インターネットおよび「インターネット・バイ・デザイン」に基づいて形成される共有プラットフォーム)を、構築し運用していきながら、持続的なイノベーションを継続するような構造を維持しなければならないのです。まさに、21世紀のグローバルな自然と共生するサイバーシステム・人工構造体からなるエコ・システムの設計と構築です。

WIDEプロジェクトは、メンバー組織の皆様との産学連携コンソーシアムとして運用されています。企業における「目的基礎研究」でもなく、独創性・独自性を要求する「純粋基礎研究」でもない、「実践的基礎・応用研究」の環境を提供することで、従来の研究組織にない成果を創出してきました。これは、WIDEプロジェクト特有のプロジェクト統治モデルであり、今後も維持・発展させなければならないものであると考えています。

これまでのWIDEプロジェクトの活動にご参画ならびにご支援いただきましたすべての皆様方、組織の方々に感謝と敬意を表しますとともに、ますますのご参画・ご協力・ご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。皆様方との協力・連携を礎として、新領域の開拓と安心・安全を実現する社会インフラの実現に向けた協調活動の拡大を皆様と推進できることを期待しております。

2016年3月
江﨑 浩

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