Title: 2017年 mawi-wg活動報告書 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2018-01-22 1. MAWI WG について MAWI(Measurement and Analysis on the WIDE Internet)ワーキンググループ は、ネットワークデータの収集と解析を研究対象とした活動を行なっている。 MAWI WGではWIDEプロジェクトの特徴を活かした研究をするため、 「広域」「多地点」「長期的」の三つの項目に重点を置いたトラフィックの計 測・解析を行っている。 広域バックボーンでのデータ収集はバックボーンを持っているWIDEだからでき る事である。分散管理されるインターネットの状態を把握するためには、多地 点で観測したデータを照らし合わせることが欠かせない。また、長期的にデー タを収集し蓄積するために、ワーキンググループとしての継続的な活動が役に 立つ。 計測技術はほとんどの研究分野で必要となるため、MAWIワーキンググループは WIDE内の他のワーキンググループと連係をとりながら活動をしている。 また、グローバルなインターネットの挙動を把握するために、海外の組織とも 積極的に協調して研究活動をしている。 WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 また、これまで行ってきたデータ解析研究は、ビッグデータ解析との共通点が 多く、今後より広い分野への応用が期待されている。 2. MAWI WG 2017年度の活動概要 2.1 WIDEトランジットトラフィック概要 MAWIワーキンググループでは、トラフィックを多次元集約するagurimツール を開発し、2013年2月よりWIDEのトランジット回線のトラフィックを継続的に 記録している。 2015年5月には、ツールをオープンソースとして公開し、同時 に、IPアドレスを匿名化したWIDEのトランジット回線のトラフィックデータを Webインターフェイスでブラウズ可能にした。 これによって、ネットワーク運 用者や研究者が、バックボーンのトラフィック状況の詳細をブラウズできるよ うになり、トラフィック情報の共有や研究の促進に繋がることを期待している。 2017年全体を通して、1日平均のトラフィック量は約300-700Mbps、パケット量 は60-120kpps程度である。 個別の集約フローを見ると、集約されたネットワークに加えて、いくつかのホ ストが識別されている。 (wide-memo-mawi-agurim2017-00.pdf 参照) 2.2 ブロードバンドトラフィックの収集と解析 トラフィック量を把握することは、今後を予想する上で、また技術やインフラ への投資を考える上で欠かせない。 なかでも、トラフィックの増加率は長期 的な計画を立てる際に重要である。 日本国内のインターネットのトラフィック量の集計は、WIDEのメンバーが中心 になって、国内ISP6社ならびに総務省の協力を得て、2004年から継続的に行わ れている活動である。 この1年間のブロードバンドトラフィックの傾向として、ここ数年加 速していたトラフィック量の増加が少しペースダウンしてきた事が挙け ゙られる。この1年間でダウンロード量は 38%増加したので、依然伸ひ ゙ているが、昨年は 48%の増加だったので、伸び率は低下している。 その要因として、この一年につ いては、大型アップデートや話題となる ストリーミングサービスの登場が少なかった事が挙げられる。 また、全体として、ソフトウェアアップデートの頻繁化や大型化が一段 落してきた事や、定額制の音楽配信や動画配信のストリーミングサービス の普及が一巡した事も挙げられる。 ISP間のトラフィックについては、大手 ISP 間で交換されるトラフィック シェアが減少する一方で、国内外のコンテンツ事業者やCDN事業者の存在 感が増す傾向が続いている。 (wide-memo-mawi-traffic2017-00.pdf 参照) 2.3 国際連携 2017年11月20日に、5年ぶりにCAIDA-WIDE Measurement Workshopを東京で開催 した。CAIDAから、kc claffy、Bradley Huffaker、Matthew Luckieの3名を迎 え、互いの計測研究の紹介と議論を行い、また、今度の共同研究について意見 交換を行った。 ワークショップの内容や発表スライドは以下参照。 http://www.caida.org/workshops/wide/1711/ 2.4 その他の活動 MAWI-WGでは、上で報告した以外にも、トラフィック解析、DNS解析、BGP解析、 セキュリティ解析、機械学習を用いた異常検出などの研究活動を行っている。 (論文リスト参照) 3. まとめ インターネットの研究において、計測はますます重要視されてきていて、国際 協調の機会も増している。 そのような状況のなかで、WIDEの計測活動は、グローバルな視点を持った継続 的な計測活動として国際的にも認知されている。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。 4. 論文リスト [1] J.T.Araujo, R.Landa, R.G.Clegg, G.Pavlou, K.Fukuda. On rate limitation mechanisms for TCP throughput: a longitudinal analysis. Computer networks, 113(11) 159-175. February 2017. [2] X.T. Phan, K.Fukuda. SDN-Mon: Fine-Grained Traffic Monitoring Framework in Software-Defined Networks. Journal of Information Processing 25(2) 182-190, February 2017. [3] Romain Fontugne, Pierre Borgnat, Patrick Flandrin. "Online Empirical Mode Decomposition", IEEE ICASSP 2017. New Orleans, USA. March 5-9, 2017. [4] X.T. Phan, K.Fukuda. Toward a flexible and scalable monitoring framework in Software-Defined Networks. NETMM2017. March 2017. [5] T.Kurimoto, S.Urushidani, H.Yamada, K.Yamanaka, M.Nakamura, S.Abe, K.Fukuda, M.Koibuchi, H.Takakura, S.Yamada, Y.Ji. SINET5: A Low-Latency and High-Bandwidth Backbone Network for SDN/NFV Era. IEEE ICC2017. May 2017. [6] S.Kobayashi, K.Fukuda, H.Esaki. Mining causes of network events in log data with causal inference. IEEE/IFIP IM2017. May 2017. [7] Anant Shah, Romain Fontugne, Emile Aben, Cristel Pelsser, Randy Bush. "Disco: Fast, good, and cheap outage detection", TMA 2017. Dublin, Ireland. June 2017. [8] Johan Mazel, Romain Fontugne, Kensuke Fukuda. "Profiling internet scanners: Spatiotemporal structures and measurement ethics", TMA 2017. Dublin, Ireland. June 2017. [9] Romain Fontugne, Patrice Abry, Kensuke Fukuda, Darryl Veitch, Kenjiro Cho, Pierre Borgnat, Herwig Wendt. Scaling in Internet Traffic: a 14 year and 3 day longitudinal study, with multiscale analyses and random projections. IEEE/ACM Transactions on Networking, vol.25(4). pp2152--2165. August 2017. [10] K.Fukuda, J.Heidemann, A.Qadeer. Detecting Malicious Activity with DNS Backscatter Over Time. IEEE/ACM Transactions on Networking 25(5) 3203-3218. October 2017. [11] Romain Fontugne, Emile Aben, Cristel Pelsser, Randy Bush. "Pinpointing Delay and Forwarding Anomalies Using Large-Scale Traceroute Measurements", ACM IMC 2017. London, U.K. November 2017. [12] Kenjiro Cho. Recursive Lattice Search: Hierarchical Heavy Hitters Revisited. ACM IMC 2017, London, UK, November 2017. [13] K.Otomo, S.Kobayashi, K.Fukuda, H.Esaki. An Analysis of Burstiness and Causality of System Logs. AINTEC2017, Bangkok, Thailand. November 2017. [14] Jonghwan Hyun, Youngjoon Won, Kenjiro Cho, Romain Fontugne, Jaeyoon Chung, James Hong. High-end LTE Service Evolution in Korea: 4 Years of Nationwide Mobile Network Measurements. CNSM 2017. Tokyo, Japan. November 2017. [15] J.Liu, K.Fukuda. An Evaluation of Darknet Traffic Taxonomy. Journal of Information Processing, Feburary 2018. [16] S.Kobayashi, K.Otomo, K.Fukuda, H.Esaki. Mining causality of network events in log data. IEEE Transactions on Network and Service Management. March 2018.