Title: IDEON-WG 2015年活動報告 Author(s): 斉藤 賢爾 (ks91@sfc.wide.ad.jp), 土井 裕介 (doi@sfc.wide.ad.jp) Date: 2015-01-06 本ドキュメントは、IDEON-WG の2015年活動報告である。 1. はじめに IDEON は、Integrated Distributed Environment with Overlay Network の略で あり、オーバーレイネットワークによる自律分散環境の研究を行っている。 研究が社会で役立つのは、それによるイノベーションが実際に起きるときであ る。オーバーレイネットワークは、基本的に、ネットワークを応用するためには 必ず形成する必要があり、その研究開発が適用可能な領域は多岐に渡る。IDEON の仲間たちは、オーバーレイネットワークの基礎技術から個別のアプリケーショ ン層まで幅広い研究活動を行ってきた。 2. 2015年の活動 2015年は、昨年に引き続き、IDEON のメンバそれぞれが、これまでの研究成果を 礎として、新たな領域へと活動を広げていく時期にあった。 2013年、デジタル通貨 (デジタル技術により創られたオルタナティヴ通貨) の 一種であるビットコイン (Bitcoin) が、いわゆるリアルマネーとの交換レート におけるその急激な価格上昇に伴い、にわかに社会の注目を浴びることになっ た。IDEON-WG はその設立 (2002年) の当初からデジタル通貨の研究を続けてお り、その10年以上の研究の蓄積から、ビットコインを巡る状況に対して、発言す べき内容を持っている。 2015年は「フィンテック(FinTech)」という言葉がバスワードとなった年だっ た。これは金融(finance) と(情報通信) テクノロジー(technology) を合わせた 造語であり、過去から存在するが、インターネットが通信/放送・卸売/小売・運 輸/郵便・宿泊/飲食・医療/福祉等の各分野にもたらしてきたものと同種のイン パクトを金融業にもたらす新技術を表す言葉として改めて注目されることになっ たものである。 次節では、2015年末の時点におけるフィンテックの技術的側面の記録となること を意図して、特にビットコインを成立させる要素技術であるブロックチェーン (blockchain) 技術に注目し、ビットコイン・ブロックチェーン(Bitcoin blockchain) の仕組みを振り返り、その応用と課題についてまとめた。また、そ の他のブロックチェーン技術を紹介し、その課題を述べるとともに、ブロック チェーン技術の本質的な特性と、社会における応用可能性に対する精緻な理解を 試みた。 3. フィンテックと分散システム -- ブロックチェーンとは結局何なのか -- wide-memo-ideon-fintech2015-00.pdf を参照。 4. おわりに 社会が大きく、しかし社会的な速度で (つまりゆっくりと) 相転移を迎えようと している今、IDEON の活動が貢献できる場面は多岐にわたると考えられる。ビッ トコインの普及により新たな局面を迎えた P2P と経済に関する課題はその一例 である。 今後も、統合分散環境の構築技術により社会に貢献できる道を様々な方面で探っ ていきたい。 -以上-