Title: 2013年 mawi-wg活動報告書 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2013-12-26 1. MAWI WG について MAWI(Measurement and Analysis on the WIDE Internet)ワーキンググループ は、ネットワークデータの収集と解析を研究対象とした活動を行なっている。 MAWI WGではWIDEプロジェクトの特徴を活かした研究をするため、 「広域」「多地点」「長期的」の三つの項目に重点を置いたトラフィックの計 測・解析を行っている。 広域バックボーンでのデータ収集はバックボーンを持っているWIDEだからでき る事である。分散管理されるインターネットの状態を把握するためには、多地 点で観測したデータを照らし合わせることが欠かせない。また、長期的にデー タを収集し蓄積するために、ワーキンググループとしての継続的な活動が役に 立つ。 計測技術はほとんどの研究分野で必要となるため、MAWIワーキンググループは WIDE内の他のワーキンググループと連係をとりながら活動をしている。 また、グローバルなインターネットの挙動を把握するために、海外の組織とも 積極的に協調して研究活動をしている。 WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 また、これまで行ってきたデータ解析研究は、ビッグデータ解析との共通点が 多く、今後より広い分野への応用が期待されている。 2. MAWI WG 2013年度の活動概要 2.1 ブロードバンドトラフィックの収集と解析 トラフィック量を把握することは、今後を予想する上で、また技術やインフラ への投資を考える上で欠かせない。 なかでも、トラフィックの増加率は長期 的な計画を立てる際に重要である。 日本国内のインターネットのトラフィック量の集計は、WIDEのメンバーが中心 になって、国内ISP6社ならびに総務省の協力を得て、2004年から継続的に行わ れている活動である。 今年も、ブロードバンドトラフィック量は着実に増加してきている。 契約数はあまり増えていないので、契約あたりのトラフィックが増えていて、 ビデオコンテンツなどによってコンテンツのボリュームが増加していることが 伺える。 ISP間のトラフィックでは、大手ISP間で交換されるトラフィックの割合が減少 してきており、国内外のコンテンツ事業者やCDN事業者の存在感が増している。 また、2010年から減少傾向にあったブロードバンドアップロード量も2013年に は増加に転じていて、P2Pファイル共有からウェブサービスへの移行が一段落 したのではないかと考えられる。 (wide-memo-mawi-traffic2013-00.pdf 参照) 2.2 NECOMAプロジェクトによるデータ収集と解析 別章で報告しているように、2013年6月より始まったNECOMAプロジェクトは 「日欧協調によるマルチレイヤ脅威分析およびサイバー防御の研究開発」 に取り組んでいる。 そのなかでも、サイバー防御に必要な多様なデータ収集 とその統合解析の部分は、MAWIの活動を拡張する形で実施している。 トラフィック情報収集に関しては、これまでのトランジット回線のパケットト レース収集に加え、いくつかの拠点においてパケットトレースやフロー情報の 取得環境の整備を進めていて、10GbEリンクのモニタリング環境も構築している。 また、複数のDNSサーバにおけるDNSクエリの収集や、ダークネットの監視など の観測基盤の整備構築を行なっている。 また、これらのデータへのアクセスを共同研究者に提供すべく、RESTとJSONを 使ったAPIの設計および実装を進めている。 データ解析に関しては、膨大なデータを横断的に解析できるよう、Hadoopクラ スタを構築して、解析ツールの開発を行なっている。 2.3 その他の国際連係 今年度は、MAWI WGとしての国際連係の活動は行なわなかったものの、研究者 レベルの交流は継続しており、先述のNECOMAプロジェクトを通したEUチームと の協調も始まった。 また、2013年6月4日には、在日フランス大使館、日仏工業技術会、慶應義塾大 学SFC研究所、WIDEプロジェクトの共催で、「インターネットの未来社会に向 けた挑戦」というテーマのワークショップを開催した。 フランスより10名を越えるネットワーク関連の研究者を招いて、日本側の研究 者と共に、未来の社会に向けたインターネットの技術課題について議論を行な った。 (fr-jp-workshop-201306.pdf 参照) 3. まとめ インターネットの研究において、計測はますます重要視されてきていて、国際 協調の機会も増している。 そのような状況のなかで、WIDEの計測活動は、グローバルな視点を持った継続 的な計測活動として国際的にも認知されてきている。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。