Title: CSAW WGの2010年度活動概要 Author(s): 奥村 貴史 (taka@wide.ad.jp) 阪本 裕介 (yanny@hongo.wide.ad.jp) Date: 2010-12-31 * はじめに 現在のように日本にインターネットが普及していなかった1990年代前半、WIDE では後に日本社会を変えていくような多くの試みがなされていた。しかし、昨 今においては、合宿や研究会への参加者も減少しており、新しい参加者も主要 研究室からの参加が主体で、多くは卒業、修了と共にWIDEのコミュニティを去 ることが珍しくない。 このような事態は、WIDEの研究コンソーシアムとしての活力を失わせる。そこ で、WIDEコミュニティにおけるコミュニケーションを活性化し、研究活動の触 媒となることを意図して、CSAW WGは、名古屋大学河口研究室を主体として開発 されたアカデミック用SNSであるACS(Academic Community System)をカスタマイ ズし、Collaboration Support Architecture for Wide-Community (CSAW)シス テムの運用を2007年より開始した。 CSAWを活用することにより、WIDEメンバーは、同じテーマに関心のある他のメ ンバーをCSAW上の「コミュニティ(フォーラム)」を通じて簡単に見つけること が出来る。また、WGやBoFのチェアは、手間を掛けずに様々な規模の研究グルー プを運営することが可能となる。また、WIDEの新人メンバーに対して気軽で簡 便なコミュニケーション手段を提供する目的にも供することが出来る。 本稿では、こうしたCSAWの現状と課題について整理し、今後の方向性について 記す。 * WIDE クラウドへの移行 CSAWシステムは、2008年にサポート終了となった PHP4 を用いていたため、セ キュリティの向上に向けてPHP5を用いた新バージョンへの移行が従来からの課 題であった。また、CSAW が動作している物理的なサーバも4年以上にわたって 同一の機器が利用されていたため、ハードウェア障害の発生も懸念されていた。 そこで、2011年度においては、CSAWシステムを今後も発展的に運用していくこ とを目的として、これらの課題への対応を行った。 まず、前者に関しては、ACSのソースコードをもとに PHP5 版の CSAW を試験的 に構築し、2011年3月7日から3月10日にかけて行われた WIDE 合宿において、本 格的な移行に向けた最終的なテストとデバッグ作業を行った。WIDE 合宿中の本 格的な移行は実現できなかったが、正常な動作を確認することができた。また、 後者のハードウェア問題への対応として、合宿においてWIDEクラウド上の仮想 サーバへの移行作業を行った。 これらの作業により、残る課題はデータの移行とユーザへの周知のみとなった が、WIDE合宿翌日の3月11日に、東日本大震災が発生した。地震そのものによる CSAWサーバへの直接的な被害はなかったものの、震災後の節電協力によりCSAW サーバの電源が一時的に落とされる運びとなり、データ移行などの作業は一時 的な中断を余儀なくされた。また、WIDE クラウド上の CSAW サーバに修復困難 なエラーが発生し、仮想サーバの再作成が必要となったことも、移行作業の遅 れに繋がった。 これらの要因により作業は大幅に遅れたが、最終的に、2011年9月6日からの WIDE 合宿においてWIDEクラウド上の CSAW をカットオーバーすることができた。 リリースしたバージョンには、後述する Twitter 連携機能も含まれている。ま た、公開レベルにあわせたユーザ写真画像の使い分け機能など、PHP5 版の ACS に由来する新機能の取り込みも行うことが出来た。 * Twitter 連携機能 2011年3月の WIDE 合宿において、WIDE メンバ向けの簡易版 Twitter 開発につ いての BoF が開催された。WIDE メンバ内の日常的なコミュニケーションを活 性化させるという目的の他に、メーリングリストを用いた従来のコミュニケー ションの代替手段を用意するという目的も挙げられた。これは、2011年2月16日 に WIDE のメールサーバがダウンした際に、その障害内容を共有する適切な手 段が存在しなかったことを受けての議題であった。 当 BoF は CSAW BoF として開催されたものではなかったが、WIDEのコミュニケー ション基盤についての活動を志向したものであった。そこで、CSAW WGの活動と して検討し、上記の目的を達成するため、下記の2機能について開発を行った。 - 「マイツイート」機能を追加し、各ユーザのホーム画面で書き込み、閲覧が できるようにする - 当機能を利用して書きこまれた内容は twitter の csaw_develop アカウント にも反映されるようにする 各ユーザがマイツイートから書き込んだ内容は、まず CSAW 内部のデータベー スに蓄積され、ユーザ名を付与した形で各ユーザのホーム画面に表示される状 態になる。この処理の中で、twitter API が呼ばれるようになっており、 twitter の csaw_develop アカウントのつぶやきとして閲覧可能な状態になっ ている。なお、WIDEメンバ向けの機能であるため csaw_develop アカウントの つぶやきは非公開設定となっている。当アカウントをフォローする際には WIDE メンバであることの確認を行うことをポリシーとしている。また、 csaw_develop アカウントへつぶやきを反映する際には、ユーザ名を付与しない 形で反映することとしている。「マイツイート」機能のユーザインタフェース を図1に示す。 (図1: fig1_csaw2011.png) CSAW の各種機能はモジュール的に実装されており、機能ごとに Community や User、System といったディレクトリに体系的に整理されている。今回追加した マイツイート機能は、CSAW の元となった ACS にも追加されていない機能では あるが、モジュール構造を破壊せずに User ディレクトリ以下のひとつのモ ジュールとして実装されている。そのため、ACS へのバックポートも比較的容 易に行える構成となっている。 * おわりに CSAW WGでは、WIDEプロジェクトにおけるコミュニケーションの活性化を通じた 研究活動の促進を目的として、CSAWシステムを開発、運用して来た。しかしな がら、活発な利用は一部のユーザーに留まっており、今後、掲示板利用の促進、 Member WIKIやmember.wide.ad.jp、bd.wide.ad.jpとの統合を含めた活性化策が 望まれる。 一方で、協力的なWIDEメンバの助力もあり、今年度は、長年の懸案としての 「PHP5への対応」とWIDEクラウドにおけるVMを利用した「ハードウェア障害へ の耐久性向上」を実現し、安定したコミュニケーション基盤の継続的な提供が 引き続き行える状態となった。また、Twitterとの連携機能を実現し、CSAW の セットアップ手順などについて知見を深めることが出来た。 研究コンソーシアムにとって、内部での自由闊達な議論は活発な研究活動を維 持していく上での生命線である。CSAW WGでは、今後も、WIDEコミュニティにお けるコミュニケーションを活性化し研究活動の触媒となることを目指し活動を 続けて行きたい。